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「乾いた掌」27

予定がつかえているので、できればさくさくと終わらせたいところ。

おそらく34までいかずに終わるのではないかと。
        3

 コロウの屋敷は、王城の西側にあった。
 敷地はかなり広く、平屋作りの重厚な邸宅はぐるりと高い塀に囲まれている。
 入り口は裏手の小さな勝手口と、大きく厳めしい分厚い檜の門扉を備えた表門の二つだけ。
 時刻はすでに真夜中を回っているので、どちらも閉じている上に施錠もされているだろうし、規模の大きい邸宅な上、警備もそれなりに厳重にしているだろうから。見張りの者が一人二人付いているだろう。雪が降っているせいか、塀の外で見回りをしている様子はない。
 もともと正面突破のみで、忍び入ることなど考えてないスノウは、そのままスタスタと無造作に正門に向かって近づいていく。
 正門横の勝手口のところまで来たスノウは、そっと扉に耳を当てて中の様子を窺うと、おもむろに扉に掌を当てた。
「……ふん!」
 深く静かに息を吸っていたかと思うと、小さな気合いをかけて肩から扉にぶつかる。
 ずどん、と腹に響く衝撃と共に、勝手口の扉が閂ごと内側に向けて吹っ飛んだ。
 深夜に響いた突然の音に、警備の兵が二人ほど慌てて外に出てきた。
 スノウはそれをちらりと見ただけで、気にした様子もなく邸宅に向けて歩を進める。
「おい、止まれ! 一体何者……」
 警備兵が誰何しながらスノウの目の前に回り込もうとした時には、すでにスノウはその懐に潜り込んでいる。
 くぐもった苦鳴を上げて俯せに倒れる兵を見たもう一人の兵が、懐から取り出した呼子を口にくわえる間もなく、声もなく打ち倒される。
 そうしている間に騒ぎを聞きつけてやってきた兵が呼子を鳴らした。
 トンビの鳴き声に似た笛の音が深夜の空気を切り裂く。
 にわかに邸宅内が騒がしくなり始める。
 だが、スノウは特に慌てることもなく、ゆっくりと屋敷を見回した。
 将軍職に就いているときに一度だけ、コロウの就任祝いで来たことがある。はっきり言って義理以上のものではまったくなかったので、挨拶もそこそこにすぐ帰った為、客間以外に入ったことはない。
 どこがコロウの寝室なのかはわからないが、そう変わった造りにも見えないので、大体の見当を付けて歩き出す。
 そうこうしている間に集まってきた兵の数はおよそ二十人ほど。まだ増えるだろう。
 スノウはそれが目に入っていないわけはないだろうが、そのまま兵たちに向けて歩を進める。
 その泰然とした姿に気圧されて、警備の兵は一瞬怯んだものの、さらに庭園から縁側に上がろうとするスノウを見て、慌てて一人が奇声を上げて抜刀し斬りかかる。
 瞬転、その兵は悲鳴を上げて宙を舞い、庭園の池に頭から叩き落ち、水柱を上げた。
 ざわめきが広がる。
 スノウが何をしたのか理解できたものは、その場に一人としていない。
 ほとんどの兵が驚愕に目を見開き、後ずさりを始めた。
 それでも、何人かが健気にも抜刀し、雄叫びを上げて斬りかかる。槍や刺叉を持った者もそれに続く。
 だが、その切っ先すらスノウに触れることもできず、全ては空を斬り、悪くすると味方を傷つけるだけだ。
 そして、怯んで動きを止めた者から、スノウに投げられ叩きつけられていく。
 スノウのゆっくりした歩みを止めることすらできない。
 ハグンを呼べ、と悲鳴じみた声が聞こえた。
 ということは、ハグンが屋敷にいるということであり、同時にコロウも屋敷にいるということだ。
 一応コロウが屋敷にいるという裏は取っていたが、ひょっとしたらそれは囮で、本人は別の場所にいるという可能性もスノウは考えていた。
 ハグンがいること自体囮と考えられなくもないが、その線は薄い。
 コロウを付け狙う元将軍付き近衛の面々はニッショウにおける精鋭である。コロウの手持ちの戦力中では、確実に彼らを撃退できる者はハグンだけである。
 その上コロウは組織も敵に回してしまっている。この都にいる限り、どこに隠れていようとも必ず彼らには突き止められてしまう。
 ハグンがいない状態で居場所を突き止められ、ガラン以下の兵たちに襲撃を受ければ結果は火を見るよりも明らかだ。
 あの臆病な男が、そのような危険を冒すとは思えない。
 ふと、スノウは周囲の空気が変わったことを敏感に嗅ぎつけた。
次の瞬間、右手の障子と雨戸を突き破って人が吹き飛んでくる。それも複数。
 スノウは慌てずに、ぶつかってくる身体に手を添えて、その勢いを借りて庭へ跳躍する。
 ふわりと着地するスノウの周りに、どさどさと雪をまき散らしつつ男たちが転がった。
 スノウがその男たちに目をやると、全員首があらぬ方向に曲がっていたり、肋骨や背骨がひしゃげており、一目で絶命しているのが見て取れた。
「──ふん、勘がいいな。それに身も軽い。面白いな」
 屋敷の暗がりからのそりと姿を見せたのは、恐ろしく太い朱塗りの槍を肩に担いだ、身の丈七尺を優に越える大男。
「……ハグンか」
「ん? オレを知っているのか。おう、よく見れば、先だってコロウを撃った男だな。覚えているぞ」
 そう言って、嬉しそうに歯を剥いて獣の笑みを浮かべるハグン。立場的にはコロウの部下なのだろうが、呼び捨てな上にその口調には敬意や忠誠心など欠片も感じられない。
「で、貴様は何者だ? 名乗ったところで、たった今オレに殺される以上意味はないかもしれんがな」
「カクギョウ・スノウ」
「ほほう、お前がカクギョウ将軍か、どうりでな。春先の戦で死んだと聞いたので残念に思ってたのだが。エンショウの方は噂ばかりで手応えがなかったのでなぁ。貴様と戦えていたらと思っておったわ」
 エンショウの名に、スノウの眉がぴくりと震える。
「お前がエンショウを討ったというのは本当の話だったか」
「おうよ。すぐに終わったので物足りなかったがな。さて、貴様はどうかな?」
 どう猛に笑いつつ、小枝を振るように軽々と大槍を操り、ぴたりとスノウに切っ先を向ける。
「なぜ、味方を手にかけた?」
 刀に手もかけないまま、スノウはハグンを真っ向から睨みつけながら問うた。
「ん? ああ……」
 言われて初めて気がついたというように、ハグンはスノウの周りに転がる死体を眺めた。
「貴様の目を眩ましてやろうと思ってな。なにか投げるものはないかと思ったんだが、手近になにもなかったのでな。どうせ土嚢よりも役に立たん連中だ、気にするな」
「……外道め」
 泥を噛んだように顔をしかめるスノウ。
 ハグンはそれを見ても、邪悪な笑みを深めるだけだった。
「いくぞ」
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