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「乾いた掌」26

そういや更新サボってた間にPC変えたんですが

その時にRSSリーダーの引っ越しに失敗しまして

ちょこちょこ伺ってたブログのアドレスも消してしまいましたw

どーしたもんかと思案中。

ついでに記事のジャンルもちょっと変えてみたり。
        2

 ニッショウの都に雪が降る。
 ガラン邸への討ち入りを決めたのは、深々と雪の降る夜だった。
 数日前から単身都入りしていたスノウは、その日を待っていたのだ。
 降り続く雪は音を吸い込み、隠密行動を助けてくれる。
 時間は真夜中。
 都は眠りに落ち、雪が積もっていく音すら聞こえそうなほどに静まりかえっていた。
 自らの邸宅へ引きこもっている安心感からか、それとも単純に人手が足りないのか、市中の見回りは特に厳重というわけでもなく、通りを行く者の影は無い。
 一応巡回の時間は確認済みであり、今は終わったばかりの頃合いだ。次の見回りまでは大体一時ほどの余裕がある。
 雪が降っているせいもあって酔っ払いの姿すら見えない通りを、スノウは襟巻きと外套を羽織った姿で一人歩いていた。
 雪の降る夜は意外と明るく、手灯りがなくとも歩くのにさして不便は無い。
 ふと足を止めて、スノウは夜空を仰ぐ。
 鈍色の曇天から、灰色の雪が次から次へと降りてきていた。
 ぶるり、と身体に染み込んでくる冷気に身を震わせる。
 ──俺は、ここでなにをしているのだろうか……。
 頭上を覆う雲に吸い込まれるように、意識が遊離していく。
 遠い空の下で、今も変わらず生活しているであろうケイ達が脳裏に浮かぶ。
 元気に、やっているだろうか。
 秋には収穫があっただろうが、人手は足りただろうか。
 あちらの方でも雪が降っているだろうか。
 子供たちは凍えてはいないだろうか。
 飢えてはいないだろうか。
 泣いてはいないだろうか。
 笑っているだろうか。
 楽しく──生きているだろうか。
 なにか言いたげなケイの顔が。
 最後に見たスエの泣き顔が。
 子供たちが、それぞれに見送りの際に見せた顔が。
 浮かんでは消えていく。
 ──俺は、なにをしているのだろうか。
 もう一度、思う。
 静かに腰の刀を抜き放つ。
 冷気を跳ね返すごとく、研ぎ澄まされた白刃に一点の曇りもない。
 今は亡きニッショウ最高の刀匠が、その奥義で鍛え上げた刀だ。
 持ち主の血から特殊な方法で採りだした鉄を練り込み、打ち上げるらしいが、詳しい製法は刀匠しか知らない。
 その製法で鍛えられた刀は粘り強く、けしって折れないと言われていた。
 文字通りに血を分けたそれは、まさしく使い手の分身である。
 冴え冴えとしたその輝きに問いかけるように、スノウはしばらくその刃を見つめる。
 だが、スノウの求める答えは浮かんでなどこない。
 刃は迷いを映すことはあっても、その答えを映すことはなかった。
 軽く息を吐いて、懐から取り出した懐紙で刀身に拭いをかけて鞘へ戻す。
 柄から手を離した瞬間、その掌がスノウの目に入る。
 ケイたちとの生活の中で、彼女たちと同じような生きるための手になりつつあった掌。
 それはいつの間にか昔のように、刀を、武器を、握るための手に戻っていた。
 命を奪うための、乾いた掌に。
 不意に覚えのある視線を感じ、スノウはそちらに目を向けた。
 そこには仄白い姿の少女が、白一色に塗りつぶされた景色に埋もれることなく立っていた。
 何を来ているのか判然としないが、どう見ても厚着には見えないというのに、凍えた様子もなく、じっと立ち尽くしたまま哀しげな目でスノウを見ている。
 やはり、以前のように聞こえない声でスノウに向かって何かを言っていた。
 その目的はいまだスノウにはわからないが、その正体については見当がついてきている。
「……わかっている。待っていろ」
 スノウがそう呟いて一歩を踏み出すと、すぐに少女は消えてしまった。
 もう一度空を仰ぐ。
 曇天は変わらずに、暗い色の雪を地上へと降らせ続けている。
 過ぎ去った昔、まだエジュンに拾われる前。
 その日その日の命があること自体が幸運であったと思えた頃。
 路地の隅で寝起きすることも多く、雪など降ろうものなら命に関わるところだったというのに、その頃からスノウは雪が嫌いではなかった。
 音もなく降り積もり、汚れたものであろうと、綺麗なものであろうと、すべてを白く染める。
 かと思えば、暖かさと共にそこにあったのが幻だったかのように消えてなくなってしまう。
 そこに奇妙な美しさを感じられずにいられなかった。
 スノウが細く吐き出した息は白く煙り、すぐに薄れて宙に消える。
 ゆっくりと歩き出す。
 寒さに右膝が痛み、スノウは少し顔をしかめたが、そのまま歩く。
 降り積もった雪に白く浮かび上がる道へ、足跡を付けていく。
 そして、スノウが残していった足跡を、降り続く雪がゆっくりと消していった。
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