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「乾いた掌」24

さらっと再開。

      四章・「不帰(カエラズ)」

          1

 コロウ暗殺失敗の報は、即座に伝令が各地に隠れていた反乱軍へと走った。
 本来コロウ暗殺の成功と時を合わせ、各地で一斉蜂起するはずだった反乱軍は、その失敗を受けて予定を変えざるを得なくなった。
 スノウたちは混乱する都から無事脱出を果たし、身を隠しつつしばらく雌伏の時を過ごすことになる。

 ──そして一月が経ち、都に初雪が降った。
「話があるのだが、いいだろうか?」
 冬を目前に急激な冷え込みを迎えたとある朝、スノウが自室で手炙り鉢に手をかざしていたガランの元を訪ねてきた。
「は、なんでしょうか?」
 反射的に腰を上げかけたガランを片手で制し、スノウは鉢を挟んで目の前に座る。
 都から徒歩で約二日、街道沿いの宿場町だ。この一月の間、街道を行きつ戻りつしながら、足跡を残さないようにスノウ率いる一団は時を過ごしていた。そうしながら都の様子をうかがっていたのだが、予想よりも捜索の手は少なく、またそれほど遠くへは出していないようなので、警戒しつつではあるがスノウたちはまた近々城下へ戻る予定になっている。
「コロウの動きは掴めているか?」
「は。この一月はほとんど自らの屋敷から出てきていないようで」
 ガランは肩をすくめて苦笑いした。
「狐野郎とは奴の別名ですが、まさしく巣穴に閉じこもっているようですな。先のスノウ様が与えた傷も経過が芳しくないようですしな」
「もともと戦働きよりも政治的な謀略や駆け引きで軍師になったような男だからな。他人の血は平気でも自ら流す血には耐えられんのだろうさ」
「様子を見るに、ガリョウから援軍やなにかしらの密使が来ている気配もないようですし、どうも奴はガリョウからも煙たがられているようですな。むしろ、我らに始末されるのを期待してるような節も見えます。コロウのような陰険な相手より、我々を相手にする方がいいとでも思っているのでしょうかな?」
「ガリョウは武偏の国だからな。奴のような人間はもとよりあまり好まないのだろう。奴自身にしても、身売りしたばかりの相手に援助を求めるなどという無様は見せたくないだろう」
「そうでしょうなぁ。……で、お話というのは、次の計画についてでしょうか?」
 ガランの質問に、スノウはゆっくりと頷いた。
 スノウ自身は、コロウ暗殺が失敗に終わったのは自らの責任だと思っている。
 スノウが責任を感じていることを周囲は気づいているが、少なくともスノウに近いものたちの中に、スノウに責を負わせようと考えている者など一人もいない。
 状況を改めて整理してみれば、運がなかったと見るのが妥当だというのが皆の見解だ。
 その狙撃の際、コロウの盾になった形のエジュンは命を落としている。その点に関しては邪推の余地があったが、もしそれが真実だったとしても、やはりスノウに対する同情はあっても責める気持ちを持つ者はいなかった。
 なにより事前の打ち合わせで、スノウに任せるのが最も妥当であるということで皆が納得したことであるからには、文句の一つも出てきようがない。
「今のところ、状況は時間を置いたからといって良くも悪くもなる要素がないですな。むしろ、前回の余韻が残っているうちに、早めの手を打つ方がいいかもしれませんが……。やはり問題がありますな」
 ガランの表情に影が差した。
「コロウが屋敷から出てこない以上、例の化け物が警護する場に踏み込んでいかなくてはいけないということです。忍び込んでいる間諜の報告では、四六時中、コロウの側で警護をしてるようだとのことで」
 一月前の襲撃時、行列の足止めを担っていたドウジの部隊がハグンと交戦。多数の犠牲者を出したという話はスノウも聞き及んでいる。ドウジ自身も負傷して、今はスノウたちの元を離れて傷の治療に専念している。
「コロウから引き離すのは難しいと?」
「は、遺憾ながら申し上げれば、奴が側にいる限りコロウを討つのは困難を極めます。事前に引き離すことが無理ならば囮を使うしかありませんが、奴相手に囮の用を成せるほどの使い手を使い捨てにするのはあまりに惜しい。せめてコロウとハグンがわずかでも離れる時間があればいいのですが、屋敷に篭もられてはその機会もほとんどありません……」
「だろうと思っていた。そこでだ、提案がある」
 そういってスノウが口にした内容に、ガランが目を見開く。
「なんと……?! お一人で屋敷を襲撃すると?」
「うむ。それがおそらく最も犠牲者が少なく、確実な手だと思う」
「……ハグンに関してはお聞き及びでしょうし、手は合わせてはなくとも直接奴を見ておられますな。……勝算があると?」
「やってみなければわからんが、俺が相手にするのが良かろう」
「正気でございますか。スノウ様の腕は存じておりますが、奴の強さは人の次元はありませぬ。いくらスノウ様といえども……。それに、もしいくにしても一人でいく必要などないではありませぬか。数に頼むのが最も危険が少なく確実なのでは」
「俺一人の方がいい。その方が死人は少なくすむだろうしな」
「死ににいくおつもりで?」
「そうなるかもしれんが、そうなりにいくつもりはない」
「…………」
「口で説明しても納得できんだろうな」
 固まってしまったガランへ、不思議に静かな笑みを浮かべたスノウは頷いて見せた。
「やって見せた方が早いだろう。腕の立つ人間を集められるか?」
「すぐにですか? そうですね、十人程度ならば」
「では、集めてもらえるか?」
「は……」
 釈然としない表情ではあったが、ガランは立ち上がった。
 それから半時ばかりで十人ほど集められたが、全員が元スノウの近衛兵だった。腕が立つということになれば、元ニッショウ軍内ではスノウの近衛が一番の精鋭だったのだから、当たり前と言えば当たり前ではある。
 当然、その中にはタカオとショウヘイもいた。
 スノウはガランと彼らを連れ、人目を避けつつ街道を少し外れた森の中に入った。少し中に入っていくと丁度いい広場があったので、そこで集まった面々を振り返り単刀直入に宣言した。「近々都へ戻り、コロウ邸へ討ち入りを敢行するつもりでいる。俺はそれを一人で行おうと思っている」
 ざわ、とざわめきが広がる。スノウが右手を挙げて黙らせると、続きを口にする。
「と言っても納得出来ない者も多かろう。そこで、今から模擬戦を行う。俺一人でお前たち全員の相手をする。模擬戦ではあるが、お前たちには真剣を使ってもらい、俺は剣を抜かない。俺に一筋でも傷をつけることができたら、その者は一緒に連れて行こう。だが、誰もそれができなければ、俺は一人でいく。良いか?」
 声を出す者はいなかったが、さざ波のように動揺が広がるのが判った。
「俺をいかせたくないと思った者がいるなら、遠慮はいらんから動けなくなるほどの傷を負わせるといい。殺すつもりでも構わん。ガラン、お前も参加しろ」
「は──。よろしいので?」
「その方がお前も納得いくだろう。さ、いつでも構わんからかかってくるがいい」
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