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「夢酔独言」68

さて、夢酔独言も残すところあと四記事ですね。

まあ、その後に「平子龍先生遺事」が残ってるんですが

分量は夢酔独言の半分もないですしね。

         ひん用師中村多仲・斉藤還物のこと

107 自分がまだ隠居する前の話だ。本所の北割下水の能勢妙見宮へ、神鏡を一面奉納しようと思い、講中へも話をして十二両ほど集めた。その時、妙見へ日参している間に、同じく日参していた中村多聞という紀州藩の金を取り扱う役人だという立派な風体の侍がいた。それで、講中で奉納する鏡の話をしたら、「それはなによりだ。わしも加入しよう」と言って三両出資したので(講中の)皆が喜んで「多仲様多仲様」と呼んでいた。金が集まったところで、多仲が「わしに金を預けろ」と言ってきたので自分は断ったが、講が自分に断り無く金を預けてしまった其の晩に、金を持って多仲の行方が知れなくなり、方々を探したが一行に手がかりもなかった。ある日その話を竹中平右衛門にすると、「それは世の中に言うところの、ひん用師というものだ」と教えてくれた。その訳を訊くと「そのひん用は、普段は立派な身なりでいて、神社仏閣、または世の中の講や役場などの色々なところ行って、信心深いふりや、諸山の金の世話人のようなふりで人目につくようにして、人々を騙して前金を取ると行方をくらまし、また他の土地へ行っては同じことを繰り返している者のことだ。その仲間は数十人居て、同心並びに岡っ引きへ残らずつけ届けをしているから、捕まらないのだ」と説明してくれた。万一雲行きが怪しくなってくると、仲間が色々とやって当人を迎えに」くるものだが、その多仲という男もひん用師だと笑っていた。
 また、ひん用師というものは、道中で薬や品を売って田舎者をたばかったりする。これも、ひん用師の少し下のものだとも教えてくれた。
 岡野にいる時のことだが、芝の山の金を貸すという話を聞いて、本所で自分が知っている旗本が七・八人その金を借りたがって、ひん用に金を盗られた。長谷川という友人がその件で困っていたので、竹内から話を聞いていた自分が、その金を盗った石川五老という男を呼びつけて取り返してやった。
 また勝田養元という男も、藤沢次左衛門という者に前金を盗られて困っていたので、その居所を探し出し、その金を取り返した。
 またある時のことだが、長谷川寛次郎がまたまた斉藤監物という者と金談をした。斉藤が長谷川のところへ出向いて色々と金の話をしていると、長谷川から酒などを出されてもてなされていた斉藤が、銀山の銀の吹寄を取り出して見せた。長谷川は珍しがって「家内の者へ見せよう」とそれを借りて内中へ見せた後、座敷へ戻ってきてその銀を傍らへ置いたまま酒を飲んでいると、その銀が無くなってしまった。監物が「貸した品を返してくだされ」と催促するので方々探したが見つからない。「いずれ後で探し出しておく」と言ってその日は斉藤を帰したが、いくら探しても銀が見つからず、ある日また斉藤がやってきて言うには、「先日御覧にいれた銀は、紀州の御国の銀山より初めてとった銀だ。すでに紀州様へ御覧にいれた品なので当分は自分が預かっている物だが、行方が知れないとなると後々大変なことになる」と段々と騙していき、長谷川から五両の銀代をとった。長谷川へは、もう金談はできないと断りをいれたので、長谷川の家中は困り果てた。そして今度は林町の今井三次郎という人とも金談をしたが、これも前広から右の会所の役人へ挨拶するからと一両二分を騙し取ってそれきりにしてしまった。今井とは馬の相弟子で普段から懇意にしていたが、ある日今井が自分のところへ訪ねてきて色々話をしているうちに、長谷川が監物に騙された話をすると、今井が自分も同じだと言う。監物の居場所を訊くと、「浅草日恩寺の地にいる」と言うので、「請け合って取り返してやろう」と言ってやると、「それは如才なく同心まで使ったが取り返せなかった」とのことだが、「取り返してやる」と言って今井を帰した。それから二・三日して斉藤監物の旅籠へいったが、それは大層な様子をしていて、座敷には神前を飾り、三畳ばかりの熊皮を据え、黒縮緬の綿入り羽織を着ていた。刀掛けには金拵えの大小を掛け、隅の方には両掛けを置いて明荷をつみ、座敷の道具も立派なものばかりを並べていた。自身ははんじゅの珠数をつまぐって大物らしくふるまっていた。小者が取り次ぎに出てきたので、名乗って座敷へ通った。
 監物は袴をはいて出てきて自分へ挨拶したので、初めての名乗りをして、色々と信心の話をした。それから中村多聞が自分のところへくるという話をして、その上で、兼ねてからおまえは多聞の御仲間だと多聞自身から聞いていたが、自分が忙しくしているせいか訪ねてもこないのだな、ともっともらしく言ってやると赤面していた。そして監物が小物に何かをささやくと、ほどなく吸物酒肴が出てきて馳走された。ほどよく呑んでから、色々なひんようの話をして、「多仲を毎度使っていたが、妙見の一件以来、今は行方が知れぬ」と話すと、「今は下総にいる」と答えたので、「お前は仕掛けが立派だから、さぞよい仕事ができるだろう」と言ってやったら、そこでようやくひん用のことを白状して、「できることがあれば言ってくれ」と言ってきた。
 そこからつけこんで今井の件を話し、金を取り返して帰って来た。「その道から入って話をすれば、向こうも商売人であるから、隠したりはしないものだ」と言って今井に金を返してやると、厚く礼を言って帰って行った。
 それから二・三日すると、監物が色々と土産を持って挨拶にきたので、色々と用事をいいつけて使っていたので、そこから世間の悪法の多くを知ることができた。長谷川へも監物の話を聞かせたら、大いに恐れていた。
 しょせん御番士顔で大きな顔をしているばかりでは、世の中をそのように知ることなどできないものだ。
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