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「乾いた掌」22

本日二本目。

このカテ、次は段落全部を入れる予定なので、ちょっと長くなると思われ。


「相変わらず、得体の知れない老人ですね……」
 スノウの側付きとして、何度か長老とスノウの会合に同席した経験があるタカオは、溜息混じりにいう。
「だがまあ、それでも信用していいとは思うがな」
 老人を見送ったスノウとタカオがそんなやりとりをしているうちに、ガランたちは説明書きを簡単に眺め終わっていた。
「それでは、早速試して見ましょう」
 人目を避けることもあるが、この場所を選んだ一番の理由は、受け取ってすぐに銃の試し撃ちができるからだ。銃各部の点検を手早く済ませ、試射の準備を終える。
「どうやら、法術などで使われる人体の『素』を収束させ、弓矢のように打ち出す仕組みのようです」
 簡単な法術なら扱うことができるドウジが、まばらにヒゲが生えた顎を撫でながら言った。
「ただ、その射程距離は弓矢と比べものにならないようです。使用する人間の『素』の強さによって差が出るらしいですが、長弓に比べれば嵩張ることもない。おあつらえ向きですな」
とりあえずは、場の中で一番法術の扱いに長けたドウジが試して見ることとなった。
予備の灯りを的代わりに、二十丈ほどの距離をとる。
 左手で銃本体の前面を支え、説明書にあるとおりの構えをとる。道具として機能的に作られているため、どこをどう持って、どのように姿勢をとるのかは、自然と判った。
 それを見ていたスノウは、見たことのないその構えに、弓射と同じ雰囲気を感じ取る。
 ドウジはしばらく筒先を的に向けたまま静止していたが、きん、と小さな金属音がした直後、ドウジが握りにある引き金を人差し指で引いた。
 どしゅ、とやや大きな音がしたと思った瞬間、的の灯りがほんの少し揺れる。
「……外しました」
 筒先を下ろして、ドウジが悔しそうに言う。
「でずが、使い方は判りました。もう一度やってみましょ……」
 体勢を変えようとしたドウジの身体が、ぐらりと揺らいだ。すぐに立て直したが、顔色が良くないようだ。
「……これは、少し消耗が激しいですね。『素』を充填させるのにも時間がかかりますし、一射目を外せば、次はないでしょうね」
「そうか。しかしまあ、もともと悠長にやり直せるほど余裕のある計画ではないし、あまり大きな問題ではないな」
「そろそろ、計画の内容を説明してもらっていいか?」
 ドウジと一緒に矯めつ眇めつしているガランへ、スノウは頃合いを見て訊いた。銃の話が出た時に、大体の概要は予想が付いたが、細かい話を聞かなくてはならない。
「はい、すでにお解りかと思いますが、我々が考えているコロウの暗殺計画は、長距離からの狙撃です」
「やはりか」
「もっとも成功率の高い方法がそれです。もし、これが手に入らなければ、かなり成功率が落ちる方法をとらなくてはいけませんでした」
 長距離からの狙撃が無理ならば、弓による中距離か白兵戦での実行になるのだろうが、弓で実行となると、町中ではなかなか隠密にとはいかなくなる。
 だが、スノウにはガランが長距離狙撃以外の成功率を、必要以上に低く見積もっている様子なのが気に掛かった。
 そう尋ねると、ガランは深刻な表情で頷いた。
「そうです。特に白兵戦ということになれば、相当に成功率は低くなると思われます」
「なぜだ? 確かに多勢に無勢となるだろうが、お前たちを始め、腕の立つ者は少なくなかろう。実際行うとなっても、そう成功率が低いとは思えん。それほどに、なにを恐れている?」
「恐れている。そうですね、その通りです」
 ドウジが、怒りと哀しみを噛みしめた顔で口を挟んだ。それを手で制して、ガランが言った。
「まずは、我々が狙撃作戦を選んだ理由から説明しなくてはいけませんね。危険性の低さはもちろん理由の一つですが、もっと大きな理由は他にあります。それは、白兵戦に持ち込んだ場合の成功率の低さです」
 ガラン自身も認めたくないのだろう、悔しさに顔を歪めた。
「カクギョウ様は、随分前にガリョウで起こった、剣士の乱心事件を覚えておられますか?」
 いきなりの話題だったが、それはごく最近、思い出す機会のあった話だ。
「うむ、知っている。それが?」
「その犯人……ハグンという男ですが、本来私刑になってしかるべき重罪人です。ところが、どうやらいずこかに幽閉されていただけだったようで、春先の戦の際、エンショウ将軍と対峙した軍勢の突撃部隊に編成されていたという話です」
「……あれは、化け物です」
 血が滲むほど唇を噛みしめ、真っ白くなるまで握りしめた拳を振るわせたドウジが続けた。
「奴を先頭にした一隊は、まるで槍の穂先のように、我が軍の本陣目がけて突撃してきました。それを止めようとした兵たちは、奴の振るう得物に手足を飛ばされ、頭を潰され、地面に叩きつけられました。我ら近衛もなんとかエンショウ様を守ろうとしましたが……」
「討ち取られたか」
「は……」
 後は言葉にならなかった。
「あのエンショウ将軍をして、三合ともたず切り伏せられたとか」
 暗い表情でガランが付け加える。
 小さく唸って、スノウは腕を組んだ。
 エンショウはどちらかといえば智将と呼ばれる型の武将だったが、剣を使えないわけではなかったし、槍の腕前はスノウも舌を巻くほどだった。
 それが、手もなく討ち取られるとは……。
「魂はなくとも、あの老人の弟子ということか」
 そっと呟くスノウ。
 そう、おそらく末期に老人が口にしていた弟子とは、その男のことだろう。
 ──それにしても、こんなところで縁が繋がるとはな。
 運命の悪戯を感じる。
 それも、あまり趣味がいいとは言いかねる、とスノウは思った。
「その男、今はコロウの近侍をしております。少なくとも、公的な場においては、必ずコロウの側に付いておりますし、コロウが一人でいる機会というのはほとんどありません。あの化け物がコロウを守っている限り、直接的な襲撃は失敗する公算が高いのです」
「名はハグンと言ったか?」
「そう呼ばれているそうです。本名かどうかは判りかねますが」
 ハグン、それが友の敵で、老人の末期の心残り。
 おそらく、いずれ対峙することになるのだろう。その確信がスノウにはあった。
 恨みがあるわけではない。
 エンショウも戦場に生きる男だった。戦場で倒れるのは、ある意味で巡り合わせである。
 友が討ち取られたという事実は確かに哀しいが、相手に怒りや憎しみがあるわけでもない。
 だが、もし手の届くところにその敵がいるのならば、見逃すわけにはいかない。
「ゆくゆくは相手をしなくてはいけないのでしょうが、今はコロウ襲撃の件を詰めることにしたいと思います。銃が手に入った以上、より確率の高い手を選びたいと思いますが、いかがでしょう」
「そうだな。計画に関する状況の下調べはしているのだろう?」  
「それは入念に」
「その上で決めたのなら、問題あるまい」
「は、ありがとうございます。ではとりあえず、ここにいる者たちで一通り試射をしてしまいましょう。使い手によって、威力も射程も変わるとのことですので」
 しばし、皆で回し撃ちを繰り返した結果、射程・威力、さらに射撃回数でもスノウが圧倒的に優れているのが判った。時点はドウジだったが、彼には予備の射撃手として今後も練習をしてもらうことになった。
 初めて触れた道具だというのに、まるで自分も一部であるかのような感覚を感じつつ、スノウは満足げに頷く。
 ありがたい。
 これで、自らの手で決着をつけられる。
「では、射撃手はカクギョウ様ということで、よろしいでしょうか?」
 確認するガランの顔には安堵と期待が浮かんでいる。望んだ結果だったのだろう。他の者たちも同じような顔をしている。
「うむ」
 東の空がほんの少し白み始めている。
 収穫祭までは、あと二週間ほどだった。
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