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「乾いた掌」17

そういえば、いつの間にやら折り返し過ぎてましたね。

自分は大体300~350枚(原稿用紙換算)くらいで書くので

30いかないくらいで終わると思います。

というか、結局二記事だけかいというセルフ突っ込み。

サーセン(´・ω・`)
「あら、お客様ですか?」
 家で雑務をこなしていたケイが、妙な連れを率いてきたスエたちを見つけ、男の方へ声をかけた。
「仕事中に申し訳ない。人を探しているのだが」
「どうも、スノウさんを探しにきたみたいで……」
 後からやってきたマドカが説明を加える。
「スノウさんを?」
 ほんの僅か目を細めて、しばし男を観察してから、ケイは身長に言葉を選びつつ言った。
「ええ、私たちはスノウという方を知っています。ですが、貴方がどこの誰で、なんの目的で彼を捜しているのかが分からなければ、簡単にはお答えできかねます」
 硬い表情と口調で伝えるケイに、スエとマドカが、自分たちの行動がまずかったろうかと不安に顔を曇らせる。
「あ、そうか。すまない、名も名乗らないままだったな」
 警戒心を剥き出しにされているのにすぐさま気がついた男は、慌てた様子で外套を脱いだ。 その下から現れたのは、まだ二十をいくつも越えていないだろう、多少の幼さを残した顔に、薄く無精髭を生やした若者だった。
 話し方にしろ容貌にしろ、典型的なニッショウ人だ。
「オレの名前はタカオ。カクギョウ将軍の近衛の者だ。半年前、戦時に行方不明になった将軍らしき人物が、この村にいると聞いて訪ねてきたきたのだが」
「近衛……、兵隊さんですか」
 ケイの表情に薄く複雑な感情が交錯したが、初対面のタカオはもちろん、まだ子供のマドカとスエも、それに気付かなかった。
「それで、なんのご用なのでしょうか? ニッショウの国は滅びたと聞きましたが」
「滅びてなどいない!!」
 さらに温度を下げたケイの口調をいぶかしく思ったタカオだったが、続く言葉で反射的に激しく反応した。だが、すぐにその無礼に気がついて頭を下げる。
「……いや、申し訳ない。貴女たちに責任などないというのにな……。どにかく、本当にスノウという名の人物がここにいるなら、会って話をさせてもらいたいのだ」
「会ってどうされます?」
「それは……」
「む、客か?」
その時、薪を背負ったスノウが、タカオの背後からやってきた。
 その声を聞いた途端、弾かれたような勢いでタカオが振り返る。
 あまりの勢いに、スノウは半歩下がって身構えたが、すぐにそれが誰なのか理解して目を見開いた。
「お前は……、タカオか?」
「将軍……!」
 慌てて片膝をつき、恭順の姿勢をとるタカオ。
「ご無事で……ご無事でおられましたか……!」
 顔を伏せたままだったが、その声がみるみる潤んでいくのがわかった。
「タカオ、お前こそ無事だったか。良かった、本当に」
 短い言葉に、暖かい気遣いが溢れている。
 とうとうタカオは男泣きにむせび始めた。

「なんにせよ、無事で良かった。で、今はなにをしている? 他の皆は? なぜここへ?」
 人心地ついて、離れでタカオと茶を挟んだスノウは、いくつか疑問を並べる。 
 タカオは目の前の茶に手をつける気配もなく、正座したまま膝へ拳を置いて答えた。
「すでに聞き及びかと思いますが、あの合戦の後、我々が交戦した一軍は、そのままニッショウの懐深くへ進みました。そののち後続の軍と合流、一気に都まで進軍し、都は防衛軍が体勢を整える暇もなく攻め落とされました」
「我ら左右の将軍が、あの際の策で都を空けてしまったのが裏目に出てしまったな。そのような進軍を許したのだ、エンショウは……」
「は……。あの合戦の際に、敵突撃部隊の奇襲を受け、討ち死にしたと聞いております」
「…………そうか」
 そうであろうとは思っていたが、いざ事実として耳にすると、深い哀しみが胸に落ちるのをスノウは止めることができなかった。
 しばらく天井を見上げていたスノウは、縁側から外へ目を移し、黙り込む。
 タカオはその内心をおもんばかりつつも、報告を続けた。
「落城の際、捕らえられた国王一家は、一名を残し、皆斬首されました」
「……なんだと? 国王家に生き残りがおられるのか?」
「は……それについては、後ほど説明いたします」
 苦々しいというか、痛みを堪えているような顔で、不自然にスノウから目を逸らしてタカオは続ける。
「今現在、ニッショウの都はガリョウから代官が派遣され、その代官が事実上支配者となっています」
「随分とガリョウ帝の信任が厚い者がいるのだな。今のガリョウにそれほど政治に長けた者がいるとは知らなかったが。名は?」
「コロウ・カシュウ」
 憎悪と侮蔑をたっぷりと乗せた口調で、タカオが即答した。
「奴が内通者だったか……!」
 何度か考えたことだった。ニッショウ軍上層部において、裏切る可能性が最も高い男とスノウは目していた。
 炎のような怒りがスノウの胸に燃え上がる。
 だが、ひとまずはそれを抑え、話の続きをうながすと、タカオが頷く。
「奴は落城の際に落ち延びた王家の一人を擁立し、ニッショウを代表してガリョウ帝と交渉を行い、旧ニッショウ領の自治権を認めさせた……と表向きはそうなっております。民の多くは疑問に思いつつもそれを受け入れておりますが、その実、ニッショウを売った見返りに、ガリョウ帝から代官の地位を授けられただけなのです」
「とりあえずでも、そういうことにしておけば、色々とやりやすくはなるだろうからな」
「はい。そしてコロウ直属の兵は、奴と共にガリョウに寝返っていますが、ニッショウ軍人の大半は、現在反抗軍として各地に潜伏しております」
「指揮は誰が執っている?」
「現在はガラン隊長が。そして、各地に身を潜めている同胞と繋ぎを取り、現在は戦力の補強を進めています。オレは何人かを使って情報を集めつつ、最近は国境近くを周回しておりました。その折、元ニッショウ兵らしい人物がこの村にいると聞き、情報を集めた結果、どうも将軍ではないかと思い至りまして。目立たぬように一人で訪ねてきた次第です」
「ガランも生きていたのだな。そうか、大変だったろう」
「いいえ。将軍が生きていたとなれば士気も上がるでしょうし、多少の無理を押しても、やって来て良かった」
「うむ……」
 スノウの表情に僅かな影が差す。だが、それを悟らせぬように、気になっていたことをタカオへ尋ねた。
「王家の生き残りがいると言っていたな。一体どなたなのだ?」
 スノウへ輿入れしたので傍系扱いになるが、第三王女を嫁にしていたのだから、スノウにとっては親戚筋に当たるし、それでなくとも忠誠を誓った王の血統だ。気になって当然である。
「は……」
 話したくない話題だったのだろう。かなり長く沈黙した後、意を決したタカオはスノウの顔を正面から見据え、告げた。
「ニッショウ国第三王女、エジュン。……将軍の奥方様です」
「なんだと……?!」
 妻が生きている。
 それはこれ以上ない吉報のはずである。
 だが、スノウの心には不安──恐怖といってもいい感情が湧き上がる。
 内蔵が掻き回されるような不快感。動悸が速まり、嫌な汗が背中をつたっていく。
 無意識に、今でも肌身離さず身につけている首飾りを、着物の上から握りしめる。
「そして……」
 タカオの顔が苦悶に歪む。
 今から自分の口にすることが、どれだけスノウの心を傷つけるか想像もつかなかった。
 それでも、伝えないわけにはいかない事実。
「国と、将軍をガリョウに売った、もう一人の裏切り者です……」
「……!」
 今度こそ、スノウは完全に絶句した。
 全身が石と化したように、スノウは沈黙する。
 そんなスノウを見ていられないのか、タカオは目を伏せて続けた。
「信じられないかもしれませんが、事実なのです。内偵している者の話と、側付きだった者たちの話を合わせても、まず間違いありません……。あの合戦の数日前から、コロウと共に都から姿を消していたことも、確かだそうです」
「…………」
「そして」
 また伝えなければならないことがある。話始めたなら、総てを伝えなければいけないのだ。
「一月後、都で行われる収穫祭。その席で、コロウとエジュン……さまは、婚礼を上げるそうです」
「!」
 スノウの肩がぴくりと震える。
 表情は完全に抜け落ち、どんな感情がその下に蠢いているのか、タカオには解らなかったし、解りたいとも思わなかった。
 もし知ってしまえば、自分は怒りと哀しみに狂わない自信が無かったからだ。

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