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「乾いた掌」15

とりあえずは御報告まで。

前に触れた応募作は、ものの見事に最終選考で刎ねられました(ノ∀`)アチャー

三次も通ったんですけどね…。

すでに愚痴はTwitterで垂れ流したのでwここでは無しでw

今日明日で結構時間ができると思うので、一日の間に複数更新あるかと思います。

※拍手コメントのお返事
 隠し子w?
 基本的にスノウはワーカホリック気味なので、出世する前は男も女も多少嗜んだでしょうが
 将軍職についてからはほとんどないんじゃないですかね…とマジレスで失礼しますw

 呼びかけてきながらやってきたのは、老人だった。稽古がある日には、大抵同じような時間に手ぶらでやってきていたのだが、今日はなぜか黒漆鞘の見覚えのない刀を携えていた。
「では、私は母屋へ戻ります。夕飯の用意ができたら呼びに来ますので。今日は、お爺さんも一緒にどうですか?」
「お、ではそうさせてもらおうかの」
 笑顔で頷いて母屋へ引き上げていくケイを、好々爺の顔で見送ってから、老人はスノウへ向き直った。
「さて、今日はひとつ試験をやろうかと思っとる」
「試験?」
「うむ、一歩間違えたら死ぬんで、心した方がいいじゃろうな」
 さらり、と今日の天気の話をするような調子で、とんでもないことを老人は口にした。
「なに?」
「まあ、何をするかはすぐ説明するからの。まずは準備せい」
「あ、ああ」
 既に服装は野良作業用の動きやすいものであるし、後は草履を履くだけだったので、スノウはすぐに準備を整えて縁側から降りた。
「説明といっても、簡単なことじゃ。今からお前さんを本気で斬り殺そうとするから、素手でなんとかせい」
「……は?」
 思わず、間抜けな声がスノウの口から漏れる。
「簡単じゃろ?」
「言っていることは簡単だがな……」
 ようは無刀取りをしろということなのだろう。
 それは一つの到達点と考える者もいるが、打ち手が取り手よりも技量が劣る場合でも、至難極まることだ。
 老人が刀を抜いて動くのを見る機会はほとんどなかったが、これまでの経緯なり、日常の動きなりを見る限り、スノウより腕が劣るなどということはまずない。
 老齢ゆえ動きが衰えていると考えがちだが、老人が授けてくれた技術体系は、身体力をさほど重要視しないことをスノウは実感している。技の熟練そのものがものを言うのだ。
 しかし、最初に「殺すつもり」と断っているということは、手加減をする気がない、という意思表示なのだろう。
 言葉と態度は軽妙な人物だが、意味のない嘘やハッタリなど口にしないのは、よく知っている。油断すれば本当に斬り殺されるだろう。
 冷や汗が背中を流れて行く感触を、スノウは感じた。
「そんなに堅くなる必要はないぞ。わしはお前さんにそれができると思っておるから、やれと言っておるのでな。技はもう十分身についておる。まさかこのわずかな期間でここまで使えるようになるとは、正直思っておらなんだ。お前さんの不幸は、あれじゃな、前にも言ったがよい師匠に巡りあわんかったことじゃなぁ」
 そう言って、老人は深く苦い笑いを浮かべた。
「わしがよい師匠だというつもりは毛頭無いがな。お前さんは、例えるなら溢れる寸前の器だったんじゃろう。あとはそれを溢れさせる為の揺れなり、最後の一滴なりがあればよかったんじゃろうな」
 珍しく饒舌に語る老人は、少し言葉を切ってスノウへ向かって頭を下げた。
「ありがとうよ。わしはお前さんのおかげで、一生をかけて会得したものを、一部なりとも残すことができる。……っと、これはまだ早かったかの。お前さんここで死ぬかもしれんしな」
 どこまで本気で言っているのかわからない口調で、老人は刀へ手をかけた。
 風切り音すら聞こえなかった。
 動いたのは分かったが、それが分かったのは、老人の刀が鞘へ戻った後だった。
 首筋を、薄く血が流れていく感触にスノウは戦慄する。
「ま、こんな程度じゃよ」
 冷や汗の量が増えた。
 今のような一撃を徒手でなんとかしろと。
 飛ぶ鳥を箸で捕まえろと言われた方が、まだしも簡単だろう。
「技も体力も十分。後は覚悟と胆力じゃ」
 そう簡単に口にして、老人は再度刀を抜いて頭上へ構えた。
 美しい。
 その老人の動きに、スノウは状況を忘れ束の間魅入ってしまった。
 まるで大輪の華が咲く瞬間を見ているような感動。
「よいか」
 老人の声で、スノウは現実に引き戻される。
「ゆくぞ」
 瞬時に場の空気が変質した。
 スノウの意識が無理矢理に引っぱられる。
 時が凍りつく。
 いや──完全には留まっていない。
 弓が引き絞られるように。
 葉先の滴が少しづつ大きくなっていくように。
 少しずつ、僅かずつ。
 その時へ近づいていく。
 そして刹那。
 気合いも、怒号もない。
 老人の刀の切っ先は、地面へ突き刺さっていた。
 老人の斜め前へと肉薄していたスノウの両手は、刀を握った老人の両手へ添えられている。
「見事」
 今まで聞いたことのない嬉しそうな声で、老人は告げた。
老人が刀を振り下ろした瞬間、その右側へ滑り込んだスノウが、刀の柄を老人の手ごと上から押した。
 一瞬の交錯で起きたことを説明するとそうなる。
 老人の一刀は勢いを加速され、その勢いで地面に突き刺さったのだった。
 次の一刀を繰り出すためには、一度刀を抜かなければならない。見事に刀は殺されていた。
「なんとかなったか……」
 スノウが深々と息を吐く。もう何年も呼吸を忘れていたような気がする。
 濃密な一瞬だったのだ。
「これでお前さんに教えることは無くなったな」
 晴れやかに言って、老人は刀を鞘へ収めて空を仰いだ。
「随分、時間が過ぎてしまったようじゃの」
 その言葉に、スノウも顔を上げる。
 老人との対峙は、ほんの僅かな時間のような気がしていたが、もうかなり陽が傾いていた。
「そろそろ、夕飯どきじゃろう」
 老人がそう言うのが合図だったように、母屋からスエが走ってくる。
 スエを迎えるためにしゃがみ込んだスノウの後ろ姿を眺めながら、老人は呟いた。
「これで、思い残すことも、無くなったの……」
 スエがスノウへ飛びつくのと、老人が横倒しに倒れるのはほとんど同時だった。
「爺さん!」
 その気配に振り返ったスノウの悲鳴が、夕闇の迫る空に響いた。

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