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「夢酔独言」63(前)

これもほったらかしだったのでUPしておきます。

妙に長い段落なので二分割。

                百姓相手の大芝居

101 それから家来へは道々でその晩の狂言を言い含め、喜三郎を呼び床の間へ白樺を生けさせた。そうこうしているうちに七つ半(午後五時)近くになったので、村方一同を代官の所へ集め、料理のできた座敷へ呼んだ。「今日は悦びのことがあったので皆残らず招いた。一同が揃ったので良かった。遠慮なく自分の家のようにくつろいで、酒をたんと呑んでくれ」と一同へ勧め、その上で「隠し芸のある者はなんでもするがいい」と言ってやった。まず自分が昔吉原を冷やかして歩いた時分に覚えた流行歌を歌って聞かせ、「一同、身分に関係なく打ちとけるがいい」と、さらに酒を勧めた。そうすると金の談事とは違い、皆笑って悦び、色々と草謡やでたらめ次第を言って、次第に酔いが回ってきた。「もう湯漬けを食うがいい」と言ってやると、一同食い終わって礼を言い、引き下がったところで、言いつけていたように中間が水を手桶に三杯汲んできた。それを浴びてから白無垢に着替え、その上へ時服を着て、燭台を二つ左右に並べて布団の上に座った。それから「新右衛門始め、村方の者たちへ申し渡すことがあるから、座敷にくるように」と伝えると、一同「呑み食いをして酔っているので、明日聞きたい」と言ったが、「明日は以前より大阪へ行く約束がある。四・五日留守にするので、一同集まっている今が良い。皆々腹を改めて地頭の話を聞け」と重ねて言うと、全員ようやくやってきた。そのとき喜三郎が次の間で「一同揃いました」と言ってきたので、襖を開けさせると、集まっていた一同が平伏した。自分が一同へ「他でもないことだが、先月より孫一郎の丈助に関わる一件について金談を申しつけていたが、その方たちは一同内談して、それぞれ己の身を用心してばかりで、一向に地頭を相手にしないなどとは不届きの至り。これによって、金談は断ることにするから、左様心得よ」と言ってやると、一同ありがたいことなのでお受けする、とのことなので、「この度、その方たちの地頭が困窮して頼むので、病身をおしてやってきて、お前たちに何分頼むといういう一言を、今までの用人同様だと思って取り合わなかった。これだけでも不敬千万だが、その上こちらへ竹槍を向けてきた。これは一体どう思ってそのような扱いをしてくるのか。その子細を聞こう。返答によっては、すぐに伊賀守へ相談し、明日にも糾明するつもりだから、そのつもりでいろ」と返した。すると一同答えもなく平伏し、「この度の件は私どもの心得違いでした、何とぞ御慈悲をいただきお許し下され」と涙を流して謝った。「それほどまでに言うならば、愚かな百姓どものやることだから、許してやろう」と言いおいてから、新右衛門へ「このような次第なので、許してやろうかと思う。ついては代官をはじめ、村役人たちへ折り入って頼みがある。聞いてはもらえないだろうか」と切り出すと、「自分たちの身分で許されることであれば、お前様の頼みは、身分に応じて承る」と言う。「自分の頼みは他でもないが、この度の孫一郎の一件は、前にも言ったとおり、江戸の吉田備後守殿を始め、諸番頭、諸親類中残らず巻き込んでの騒動である。そのおかげで、ここで話すよりも一同が心配している。丈助は身を投げ出して掛け合ってなかなか片づかず、評定所扱いになるところを、自分が見るに見かね、先々のことも含めて事済みにしようとしたが、金子の件だけがどうにもならなかった。それゆえにここまで来て談事に及んだが、孫一は借金が多く、一同は迷惑しているという。その言い分に理が無いわけではないが、その方たちは岡野江雪己来この地へ住んで、地頭の恩が深いのは、代々の地頭の恩であると自分は思う。その地頭の家名に及ぶ程の事を見捨てるとは、畜生にも劣ると思うから、この度の談事をしたのだ。千両や二千両は、自分が大阪の奉行へ頼めば、すぐに調達できるのだ。だがそれでは江雪斎より知行所を拝領した意味がない。なぜかと言えば、孫一郎の家名に関わることに、知行を差し置いて他に金を借り、家を建て直したとなっては、第一に祖先への不孝である。民が従わないせいだと世間が噂すれば、身を立てて家を興すこともできまい。朋友へも顔向けできないと思うからこそ、その方どもへこの度の手柄を立てさせ、主従安堵して一同義心の現れであると世間の謗りも受けまいと思ったのだ。結局は金談ができないから、自分の志は無になってしまった。だが、なんの成果もなく江戸へは帰れないから、今晩自殺して江戸への申し訳を立てる。代官や村役人へ頼むのは、自分の亡骸を役人に付き添わせて、江戸にいる倅へ渡してほしい。また、勇八はこの書状を持って帰国し、孫一郎へ渡してくれ。あとの供はこれまで色々親切に世話もしてくれたし、それぞれに預けた金をすべてやるので、明日にでも発って自由にするといい。喜三郎は江戸から約定もしてきたから、今晩は大儀ながら介錯を頼みたい。その上で帰国して、妻子へよくよくこの件を話して聞かせてくれ。あとは言うこともないから、この時服は村役人の家へ預け置く。汚れないようにしろ」と言って、時服を脱ぎ広蓋の上へ置き、喜三郎へ自分の刀を渡した。「これで介錯しろ」と言いつけて、前もって江戸で作らせていた首桶を出させ、一同へ「頼んだこと、よくよく心得るように」と言いつつ脇差しを抜いて布切れで巻き、「一同許すから、顔を上げて自分の自殺(切腹)をよく見ておけ」と脇差しを取り直した。
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