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「乾いた掌」9

さあ、毎日更新(努力)とかいって、いきなり日付が跳んでますな。

ぼちぼち狼少年タグがつけられそうなので気をつけないといけませんね。

この形式でやっていくなら、タグも整理した方がいいかな?



7/31記事の拍手お返事↓
十枚、というキリでやってるので、結構中途半端で切れるんですよねw
余裕があれば、分量を増やしたり記事数増やしたりしたいんですが(^_^;)。
にんともかんともニンニンってなもんでして。
冷厳な月明かりを反射する白刃の上を、深紅が一筋線を引く。
 驚いたスノウが刀を放し、、重さに引かれてケイの手からも離れた刀が地面に落ちる。
負傷の衝撃で硬直しているケイの両手をとり、スノウは慌てて傷を確認した。さすがに小さくケイは声を漏らしたが、スノウが確認したところ幸い骨にまで達する傷ではない。
 とはいえ、一歩間違えば指の何本かは落ちていても不思議ではない暴挙だった。
 しばし状況を忘れ、傷が比較的浅かったことに安堵の息をつくスノウの耳に、かすれたケイの呟きが届く。
「……死んではいけません、スノウさん」
「なに……?」
 その小さな声とは裏腹に、抗いがたい圧力が込められた言葉に驚いて顔を上げると、ケイの黒瞳がスノウをじっと見つめていた。
「死んだら、駄目です」
 もう一度、ゆっくり一言づつ区切りながら繰り返す。
「どんなに辛くても、苦しい目にあっても。どれほどの辱めを受けようと、生きている限り、喜びも、幸せも、必ずあります。女神様の祝福があります……」
 言葉の間から滲み出す哀切な響きが、スノウの心臓を掴んだ。
 血の気が引いたケイの唇から、こぼれ落ちる。
 繰り返す。
「……死んだら、駄目です」
 スノウは、両肩にその言葉の重さが、ずっしりとのし掛かるのを感じた。
 小さく頷き、随分長い間黙り込んでいたスノウは、血で汚れたケイの手をそっと両手で握りしめ、ぽつりと言う。
「…………すまん」
 冷たい光を地上に投げかける月は、薄雲の向こうへ身を横たえようとしていた。

          4

 月夜の一件から、さらに一月が経った。
 目処が立ち次第、すぐにでも出て行くつもりだったこともあり、当初は基本的な生活を離れで送っていたスノウだったが、とりあえずはこの村を生活の場と決めたのか、母屋で過ごす時間が増えていた。
 さすがに寝起きは離れでしているが、たまにスエ辺りが布団に潜り込んでくることもあったし、食事や日常の仕事を共にこなすうちに、子供たちの態度も客人に対するものから、身内に対するものへと変わってきている。
 ケイの両手を怪我させてしまった償いの意味もあり、杖を突かずともなんとか歩けるようになったスノウは、すぐに農作業の手伝いを始めた。
 先生は大方の場合子供たちである。村の人間であれば子供でもできるような仕事を、覚束ない様子で興味深そうに覚えていくスノウを横目に、少なからぬ好意も一緒に子供たちの内に育っていった。
「もう、随分良くなったようですね」
 傷はふさがっているが、一応保護のため、いまだに巻かれている包帯が痛々しい手をスノウの膝から離し、ケイは言った。
 元々無愛想な人間ではないようだが、ケイの表情も最初に比べれば少し柔らかくなったような気がする。
 緑が萌えつつある昼下がり。仕事が一段落したスノウは、離れでケイの診断を受けていた。 座ったまま膝を曲げ伸ばし、側で畳の上を転がって遊んでいるケイを横目で見ながら、スノウは頷いた。
「歩く分には、もうほとんど気にならん。まだ深くは曲げられんし、力を入れて踏みしめると痛みはするが」
「それは仕方がありませんね。気長に治すしかありません」
「そうだな。むしろ、ここまで良くなったの僥倖だと思う。貴女には本当に感謝している」
 深く頭を下げるスノウの真っ直ぐな感謝に、ケイははにかんだ笑みを浮かべる。
「前にも言ったかもしれませんが、女神様のお力です。私はただ、それの橋渡しをしているだけです」
「……すまない、以前から訊こうと思っていたのだが、その力は自分に対して使えないものなのか?」
 スノウはケイの両手に視線を送りつつ尋ねた。この一月の間見た感じでは、特に特別なことはせず、普通に治療しているようにしか見えなかったのだ。
「使えますよ、使おうと思えば。だた、癒しの手の使い手は、命の危険にさらされない限り、自分に対しては極力術を使ってはいけないというのが、大地母神教の教えなんです」
「教義か」
 ケイは、毎日夜になると子供たちに大地母神教の教えを説いているが、スノウへは特に聞くことを勧めていないし、スノウもその場にいることは多いが、熱心に耳を傾けたことはあまりない。
 大地母神の教えは、決して押しつけがましいものではない。教義の押しつけは、信徒の最も嫌う行為である。
 特にスノウが不信心なわけではない。自身が何かの教えに帰依しているわけではないが、戦の前には戦意昂揚のために軍神に祈りを捧げる儀式を行ったこともある。
「当然、なにかの意味があるのだろうな?」
「はい、それはもちろん。教えの第一義は、自然であれ、ということですから。女神様の力をお借りしているとはいえ、癒しの手は自然本来の行程を跳ばしてしまうわけですから、その使用に関しては、厳重な注意を与えられています。危険はなるべく事前に回避するべきである、ということです。絶対に使うな、ということではありませんが」
 ケイは、包帯が巻かれた両手を膝の上でそっと合わせて、小首を傾げた。
「自ら守ることにこそ、教えの意味はあるものですから」
「そうか」
 共感はできないが、理解できなくはない。それがスノウの素直な感想だ。
 二月近くをケイたちのもとで過ごしたスノウには、その言葉に濁りを感じられない程度には、ケイの敬虔さを知っているつもりだった。
文句なしに善良な人間だと思うし、その献身と優しさに、随分スノウは救われた。
 だが、どうにも違和感を感じることがたまにある。
 言葉では説明できない感覚なのだが、折りに触れ、ケイの中に深淵というか、感情も想いも吸い込んでしまうような、何か仄暗いものが隠れているような気がしてならなかった。
だからこその敬虔さなのではないか、そのように感じる。
 突き詰めるつもりも、その必要もないことではあるのだが。
 なんとはなしにそこまで考えて、スノウは苦笑いした。
 まだ、将軍職についていた頃の癖が抜けていないな、と自嘲する。
 武官とはいえ、それなりに権謀術数渦巻く政治に関わっていたおかげで、妙な違和感や作為に反応してしまう。
 ──あの時には、見抜けなかったというのにな。
 二月前の戦、あの策は確実にガリョウ側へ漏れていた。
 どう考えても一定以上の官位の者に内通者がいたはずだ。おそらく、いや確実にその顔を知っているはずだ。
 それを見抜けなかった結果、すべてを失った。
 国も、主君も、友も、部下も。
 そして、愛するものと、生まれてくるはずだった生命も。
 生き残っていてくれれば。そう思ったが、その後伝え聞く噂は否定的なものばかりで、ただ絶望ばかりが募っていくばかりだった。
 悔やんでも悔やみきれるものではない。
 実を言えば、この一月の間、幾度か自害を考えた。
 だがその度に、あの夜流れた紅と、こちらを見つめる黒瞳を思い出し、果たせなかった。
 この後悔を抱えて生きていくのが、自分に与えられた罰なのかもしれんな。
 最近は、そう考えるようになってきたものの、この先ここで世話になるかどうかは決めかねている。ケイは、いつまででも居て良い、と言ってくれているし、子供たちもスノウとの生活に不快を示す者はいない。
 ふと、傍らのスエに目をやる。
 子供たちが好意を示してくれればくれるほど、その子供たちを孤児にしてしまった責任の一端が、確実に自分にあるという意識が強くなっていく。記憶が戻り、自分が一国の将軍職にあたと思い出してからは、なおさらだ。
 幼い子供たちをみていると、生まれてくるはずだった生命を思い出しもする。
「スノウさん、どこか痛みますか?」
 つかの間考えに沈み、黙り込んだスノウを不審に思ったが、気がつくとケイの黒瞳が心配そうにスノウの顔を覗き込んでいた。
「……いや、なんでもない。大丈夫だ」
「そうですか? 頭も強く打っていたのですから。今のところ、その影響は見えませんけど、突然症状が出ることもありますから、おかしいと思ったらすぐに言って下さいね」
「ああ、気を使わせてすまん」
 スノウの返事に微笑んで、ケイは腰を上げかけた。
「ケイ姉ちゃん、大変だよ!」
 まろびつつ、縁側へ走り込んできたのはネンジ。
 
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