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「乾いた掌」7

最近、ちょっとした騒ぎになっている某お絵かきサイトですが。

ちょっと追っかけただけで、とんでもなく面白い(不謹慎)話になってますね。

マンガか映画かと思うほどの、怒濤のイベントっぷりで

作業に影響をきたしてしまいました(^_^;)。

人は人、自分は自分で、やることはちゃんとやらんといけないんですが。

反省(´・ω・`)。

「ここのところ、国境周辺は騒がしいようでな。怪我人がウロウロしとれば、すぐガリョウの兵に見つかるじゃろうし。村の誰ぞに頼んで使いに出てもらうにしても、国境は越えんとならんから、見つからずに行くのも難しいじゃろうしの。遠慮せんと、怪我が治るまで厄介になっとれ。ケイは怪我人を匿うことを迷惑なんぞと思うような人間じゃないしの」
「ケイさんか」
 少し丈の足りない着物のあわせに触れながらスノウは呟く。その手の下には、先日ケイから手渡された鹿角を模した首飾りがあった。自分の持ち物だということだが、それを意識すると、どうにも胸騒ぎがする。誰かが自分の墓の上を歩いているかのように、心にさざ波が立つ。
「……だからこそ、迷惑をかけてはいけないと思うのだが」
 簡単にではあるが、ケイの身の上は聞いている。
 数日を共にしただけだが、子供たちの懐きようや、言葉の端々を見ても、善人であることは間違いなさそうだ。それゆえに、自分のような揉め事の種が側にいてはいけないような気がスノウにはするのだった。
「言わんとするところはわからんでもないがな。ろくすっぽ歩けもせん怪我人を放り出す方が、ケイの心は痛むじゃろうよ」
「む……」
 その通りだろうと思ってしまったスノウは言葉に詰まる。だが、どうにも漠然とした不安感が拭えないのも確かで、できうる限り早く動きを取りたい気持ちもあるのだ。
「どちらにしろ、怪我を治して、多少でも自分の事を思い出さんことにはどうにもなるまいよ。まあ、歩けるようになったら、身体を動かす付き合いくらいはするからの。あれこれとやっておれば、そのうち思い出すじゃろうよ」
 気楽な調子で言い放つ老人に、スノウは喉の奥で小さく唸ったまま黙り込んでしまった。

 その晩のこと。
「なにか、俺にもできる仕事はあるだろうか」
 食事を運んできたケイに、スノウは躊躇いがちに訊いた。
 ケイは一瞬驚いた顔をしたが、すぐににっこりと笑みを見せる。
「気を使わなくても結構ですよ。ゆっくり怪我を治すことだけ考えて下さい」
「いや……なにかやっていた方が落ち着くのだ。無理にとは言わないが」
「そうですか……。それでは、なにか考えておきますね」
 あごに手を当てて少し考えてから、ケイはゆっくり頷いた。
 
 翌日、朝食が終わってからスノウのところへやってきたのは、年長のお下げ髪の少女と、一番最初に見かけた赤毛の女の子だった。
「ど、どうも。あたし、マドカっていいます。この子はスエです」
 人見知りなのか、厳めしい見た目のスノウに気後れしているのか、マドカは伏し目がちに挨拶したが、スエの方は人懐っこい笑みを、にぱっと浮かべた。
「それじゃ、あの、スノウさんには縄をなってもらいます。やったこと、あります?」
 縁側に置かれた藁の束を前に、スノウは首を横に振る。
「あ、そうか。色んなこと覚えてないんですよね。大丈夫です、教えますから」
 そう言って、マドカはテキパキと準備を始めた。束をほどいて、適当な量を足の指に挟み込み、いくつかの束に分けて縒り込んでいく。
 どんどんと縒りこまれて束が短くなると、藁を足し、挟み込む位置を少しずつ変えつつ、縄が出来上がっていった。
 捩り込んでいっているだけのように見えるが、なぜほどけていかないのか、スノウはとても不思議に思いつつ、その手元を見つめていた。
 その隣で、スエもそれに倣って作業を始める。マドカと比べてややぎこちなく、伸びていく縄もやや粗いが、ちゃんとなわれていく。
「む」
 スノウも怪我した足に負担をかけないよう縁側に座りつつ、見よう見まねでやってみるが、端から解けてしまって形にならなかった。
 それでも悪戦苦闘する様子を見ていたマドカは、固かった表情を少し緩める。
「ふふふ、最初はそうなりますよね、あたしもそうでしたから。……それぞれの束がお互いを支えるように、捻る方向を合わせていくんです。そうすると、ほら」
 慣れた手つきで、縄が出来上がっていく。きっちりと縒り合わされた縄は、まったく解ける気配がない。
「なるほどな」
 マドカの手元を覗き込んで、心底感心した面持ちで眺めていたスノウも、それを真似て縒り方を変える。すると、多少不格好ではあったが、今度は解けずに済んだ。
「そうそう、そんな感じです。急がなくてもいいですから、丁寧にお願いしますね」
「うむ」
 嬉しそうなマドカにスノウが頷き、しばし黙々と作業を続ける。
 やがて太陽が中天に掛かったところで、一段落つけたマドカが手を止めて顔を上げた。
「そろそろ、お昼にしましょうか」
 いつの間にか作業に熱中していたスノウは、マドカの一言で我に帰って手を止めた。
「む……」
 熱に似た軽い痛みを感じて掌を見ると、何度も擦れたせいで赤くなっている。熱中している時には気にならなかったが、慣れない作業ですり切れてしまったようだ。幸い皮膚が破れるほどではないが。
「あ、やっちゃいましたね。慣れないうちは余計な力が入りますから、そうなりやすいんですよね。スエ、スノウさんにオトギを採ってきてあげて」
 マドカがスノウの掌を覗き込みながら言うと、スエははしっこく立ち上がり、縁側から下りたと思うと、手近の草むらへ走っていった。
 そこでしばらくしゃがみ込んで、なにかを物色しているようにじりじりと横へ移動していたが、やがて何本か同じ草を折り採って戻ってくる。
 バタバタと縁側に駆け上がり、スエはどうだと言わんばかりの顔でスノウの目の前に、手にした草を突き出した。
「これは?」
「擦り傷なんかに効く野草です。手の中でしっかり揉み込んでみて下さい」
 動作混じりに説明するマドカの指示通り、草を丸めて手の中で揉みながら、スノウは尋ねた。
「今、スエがこれを採る時、同じ草を何本かわざと見逃したように見えたが、あれはなにか意味があるのか?」
「ああ……、先生の教えなんです。野草を採る時には、取り尽くさないように、四本目から採りなさいって」
「大地母神教の教えというわけか」
「確認したことはないですけど、そうだと思いますよ。じゃあ、ご飯にしましょう」
 頷いて立ち上がろうとしたスノウに、マドカとスエが手を貸す。スノウに触れた二人の手が、毎日の作業で鍛えられて皮が厚くなっているのにスノウは気付く。。
 とても美しいとは言えない子供たちの手が、何故かスノウの心にしっかりと焼き付いた。

            3

 スノウが、なんとか杖を突きながらも歩けるようになったのは、一月が経った頃だった。
「なるべくなら、出来る限り歩いて下さいね。その方が治りも早いですから」
 ケイにそう言われて、スノウは作業の合間になるべく散歩をするようにしている。
 今日は昼前にぽっかりと時間が空いてしまったので、ケイの家の裏山にある、大地母神の祠まで散歩にきていた。
 ちょろちょろとスノウの足下を動き回っているのはスエだ。どうもスノウのことを気に入ったらしく、よくスノウにくっついて作業の手伝いをしている。
 ケイも、スノウの側に付いている者が必要と思っているので、それを咎める気配は無い。
 ささやかながらも仕事を与えられるようになってから、スノウは母屋で子供たちやケイと一緒に食事を摂るようになった。
 スエとマドカ以外、しばらくは人見知りしていた子供たちだったが、好奇心には勝てなかったようで、その内に打ち解けてしまった。
 子供たちは皆戦災孤児だということだったが、不思議とスノウから戦の話を聞きたがった。特にネンジ、キソウ、シシュンの男の子勢は熱心だったのだが、スノウの記憶はいまだ戻る気配が無いので、話をねだられても覚えていないのだから話のしようもない。
 むしろ、細々とした普段の生活に関してや、日常の作業に関して教えを請う機会が多いのはスノウの方だった。だからといって、子供たちは特にがっかりすることもなく、嬉々として教えてくれるのだが。
 仕事を教えるに当たっては、女の子たちの方が熱心であった。
 女の子は年長のマドカを始め、スエよりもいくつか年上のキョウを含めて三人。主に子供たちをとりまとめ役はマドカが行い、力仕事などになるとネンジが中心になっている。
 キソウとシシュンは年齢が変わらないのもあって、よく二人で行動しているし、キョウは小まめにスエと子供らしい小競り合いを起こすものの、基本的に仲はいいらしく、いつもかしましく笑っている。ただ最近のスエはスノウの側にくっついていることが多いので、ほんの少し寂しそうではある。。
 ケイたちと食事をするようになってからスノウは知ったが、スエは口がきけないそうだ。
 

 
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