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「乾いた掌」6

なにも無かったかのように更新。

サーセンm(_ _)m

※拍手のお返事↓
 
自分も漢字の方が好きなんですが、やや不評だったのと、テキスト形式だとカナがふれないので…w
自分の話には、ドッペルゲンガーが良く出ます。
本人だったりそうじゃなかったりって話でして(^_^;)
話の中で特に言及の無い場合は、ご想像にお任せしますという仕様ですね。

「ケイ姉ちゃん、はやくはやく!」
「はいはい、ちょっと待ってね……」
 男の子と若い女の声が聞こえてきたと思うと、縁側から女が一人と子供たちが顔を出した。
「お目覚めになりましたか?」
 化粧気はまったくないが、溢れんばかりの素朴な健康美を湛える顔立ちに笑顔を浮かべ、ケイは草履を脱いで縁側から上がってきた。
「……ここはどこだ」
 巌のように固く、乾いた声が男の口から漏れる。
「ガリョウ国東のカハタという村です。お加減はどうですか? 痛むところは?」
「……頭と膝が痛む。だが、我慢できん程ではない」
 その他にも、半身に治りかけた火傷のような引きつりがあったが、こちらは違和感程度で痛みはあまりない。
「我慢はしないで下さいね。痛いところはそう言っていただいた方がいいですから。少し、失礼しますね」
 男が上体を起こそうとするのを手で制止して、布団の横に座ったケイは軽く会釈してから足下の布団をめくった。
 その下から現れた粗末な包帯に包まれた男の膝に優しく手を当てる。なにやらボソボソとケイが小声で呟くのが男の耳に聞こえたかと思うと、いわく言い難い温もりが膝に広がり、それと共に膝の痛みがすうっと引いていった。
「?」
 なにが起きているのか判らないようすの男をよそに、ケイは布団を元に戻し、男の枕元に移動し、今度は男の額に手を当てる。
 額に置かれる直前に男が見たその掌は、農作業や日々の務めのせいだろう、やや硬く少し荒れ気味だった。
 だが、男はその手がとても好ましいものに感じられた。
 よくは判らないが、なんらかの治療行為なのは確かだろう。先程膝に感じた感覚が額に広がるのを感じて、男は目をつむる。
「……慈悲深き大地の女神様、傷つき痛みに苦しむ者を助ける力をお貸し下さい……」
 ケイが呟いているのは、おおよそそういう言葉だった。
 閉じた男のまぶた越しに、柔らかい光が見える。染み込むように柔らかいその光は、頭の奥の痛みを少しづつ溶かしていく。
「どうでしょう。多少は楽になられたかと思いますが」
 多少どころではなく、膝の痛みも頭の痛みも、すっかり引いてしまった。痛みが無くなっただけで、歩けるようになったわけではないようだが、驚くべきことだった。
 ケイが手を引くのを待ってから、男はゆっくりと上体を起こす。痛みは今のところやってこない。
「……今のは?」
「女神様のお力を借りた、癒しの手という治癒の術です。私自身の修行が足りないので、すぐに全快させられるわけではありませんが、痛みを和らげるくらいはできます」
 なんのことか男には半分も理解できないが、とりあえず男は動かない膝に苦労しながらも、なんとか居住まいを正した。
「礼を言う。随分楽になったし、そもそも俺は面倒をかけているようだ」
 やや格式ばっているが、真情の見える態度に、ケイは優しく微笑む。
「傷ついた方や、迷っておられる方のお手伝いをするのは、女神様の意思に適うことです。お気になさらず。──お名前を、お聞きしてもよろしいですか?」
「スノウ」
 反射的に答えたところで、先程から感じている違和感の小隊に気がつく。
「……というのが俺の名前だと思うのだが。申し訳ないが、それ以上のことは何も思い出せんようだ……」
 頭にも巻かれている包帯に手を添えつつ、なんとか頭を働かせようとするが、もやもやとした断片的な記憶が脳裏を行き交うだけで、はっきりとした形を取らない。無理に思い出そうとしても、痛みがぶり返しそうな感触がするだけで、どうにもならない。
 眉間に皺を寄せて黙り込んだスノウに、ケイそっとその肩を押して横になるよう促した。
「頭を強く打ったようすですから、少し混乱しているのかもしれません。今は怪我を治すことだけを考えて下さい。そのうちに思い出すでしょう。ご飯は食べられそうですか?」
「ああ。すまんが、お言葉に甘えさせていただきたい」
「それでは用意してきます。少しお待ちになって下さいね」
 ケイの丸い尻が母屋の方へ去っていくのを、見るともなしに見送ると、事の推移を固唾を呑んで見守っていた縁側の子供たちと目があった。
 年長の子供たちは少し驚いたようだったが、目礼してケイの後を追い、小さな子供たちは人見知りしているのか、バタバタと慌ててさらにその後を追った。
 最後に一人だけ残ったのは、目が覚めて一番最初に見た赤毛の女の子。
 女の子は歯が一本欠けた口で、にかっと笑うと母屋へと走っていくのを見送りつつ、どう反応して良いものか思いつけなかったスノウは、なんとなくまた天井を見上げた。
 ゆっくりと、様々な事を思い出そうと努力するが、やはり記憶は霧の向こう側だ。
 何も思い出せないが、なぜか、かすかな焦燥感だけが胸を叩いている。
 だが、その原因も思い出せず、怪我の為に身動きもままならない。
 スノウは深く息を吐き出し、目を閉じるしかできなかった。

       **********

「おお、目が覚めたようじゃな。どうじゃ、調子は?」
 知らない老人がスノウの起居する離れに姿を見せたのは、スノウが目を覚ましてから二日後の早朝だった。
「……だれだ?」
 縁側に砕けた片足を乗せ、逆の足をぶらりとさせた姿勢で、目の前に水田が広がる景色を眺めていたスノウは、妙に人懐こい雰囲気の老人へ首を傾げて尋ねる。
「たまにここへ寄らせてもらっとる、ただの爺じゃよ。なに、預かりものを返しておこうかと思っての」
 そういって老人がひょいと差し出したのは、黒漆の鞘に収まった一振りの刀。
「水に沈んだおかげで、中まで水浸しだったのでな。そのままにしとくと刀が痛むじゃろうと、余計なことかもしれんが手入れさせてもらったぞ」
 差し出された刀を反射的に受け取ったスノウは、自分の手が刀の鞘に吸い付くような手触りを感じた。それはまるで引き離された半身に出会ったかのような、古い友人と手をとりあうような感触だった。
 見た瞬間は覚えがなかったものの、なによりその感触に、手にした刀が自分のものであるという確信が生まれる。
「お前さん、良い刀を使っとるな。刀を見れば持ち主の腕前が判るもんじゃが、なかなか使えるようじゃの」
「……そうなのだろうか?」
「おお、そうか、お前さん記憶がないとかいうことじゃったな。なにも覚えておらんのか?」
「スノウという名前……だと思うが、それ以上のことはなんとも」
「ふむ。まあ、お前さんがガリョウの人間でないのだけは確かじゃろうがの」
 どっこらしょ、と老人はスノウの隣に腰をかけた。
「その刀の製法・拵え、どっちもガリョウのもんじゃないからの。山向こうのニッショウのもんじゃ。お前さんが着ていた鎧の紋もニッショウのもんじゃったし。そうそう、鎧は処分させてもらったぞ。ボロボロで、もう役に立たんじゃろうからの」
「それは構わんが……。色々とお詳しいようだな、ご老人?」
「年寄りというのは、役に立つこと立たないこと、色々知っておるもんじゃよ。ま、お前さんは、しばらくここで身体を治すことに専念した方がいいじゃろ」
「俺がニッショウの人間なら、早いうちにここから出て行った方がいいだろう」
「……なにか思い出したのか?」
「思い出したわけではないが、ニッショウとガリョウが戦をしているということくらいは耳にしたからな。ここはガリョウだそうだから、ニッショウの人間がウロウロしない方がよかろう。状況から鑑みれば、俺は軍人のようだしな」

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