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「乾いた掌」4

十枚ありませんが、キリがいいのでここで切ります。

これで序章が終了ですね。

ちなみに、国の名前は日昇(ニッショウ)と雅猟(ガリョウ)です。

普段、新作を書くと読んでいただいて(移植予定作も全部)いる方に

「そんなことより、とっとと新作を書け」と、軽くお叱りを受けたり。

( 〃..)ノ サーセンw

  
「ほう、やったか!」
 天幕の外で兵の報告にガリョウの司令官は相好を崩した。
「は、死体の確認をしたわけではありませんが、手負いであの急流に呑まれて無事で済むとは思えません」
「そうかそうか、よくやったぞ!」
 喜びを全身で表現しながら、手を叩いて喜ぶ。
「ニッショウの剣鬼が死んでくれただけでも、今回の作戦の価値があったというものだ! 今回は本体の方にも我が国の化け物が投入されておるからな。そちらも上手くいっていることだろう! よしよし!」
「僭越ながら」
 先程と同じように、一緒に報告を聞いていたコロウが、対照的に冷たい調子でまたも口を挟む。
「死体の確認をさせたほうが良いかと思いますが」
「むう、コロウ殿、今の報告を聞いていなかったのかな?」
 興奮に水を差されて気分を害したのか、司令官は鼻の頭に皺を寄せて鼻を鳴らす。
「万が一、ということもありえます。その万が一を見逃してしまった場合、面倒な禍根を残すことになるかと」
「面倒なのは、貴殿が、であろう。まあいい。今は気分がいいのでな。兵を貸してやるから、川さらいでも何でもさせるがよかろう」
「……お気遣い感謝しますよ、司令官」
「気にせずともよい。貴殿も今後は我が軍の一員なのだからな」
 自分では鷹揚なつもりなのだろうが、誰が聞いても野卑なだけの笑いを残して、司令官は作戦終了と引き上げの命令を出すために席を外した。
「皮肉も通じないとはな。あれが司令官とは、ガリョウの人材不足も深刻なようだ」
 盛大に溜息をつきながら、側にいるニッショウから連れてきていた直属の部下にだけ聞こえるよう、嘲笑を込めて口を歪めるコロウ。その部下も、司令官の言動を快く思っていないのか、苦笑い気味に頷く。
「まあ、だからこそガリョウの方が成り上がれると踏んだんだが。ニッショウにあの二人がいる限り、軍師以上の地位を狙うのは難しかったからな。今回のこれで、両方が死んでくれれば、より一層今後がやりやすくなるはずだ」
 狐のような笑みを浮かべて、コロウは空を見上げた。
 すでに雨は上がりかけており、朝日が夜の闇を払い始めていた。

     **********

「見つかったか!」
「いや……」
 苛つきもあらわに、若いニッショウ兵がタカオに訊くが、タカオは悄然と肩を落としたまま首を横に振った。
「なんてこった……」
 若いニッショウ兵が、がっくりと両肩を落とす。
 すでに夜は明けきり、嵐が過ぎ去った直後の澄みきった青空が、頭上に腕を伸ばす枝葉の間から見えていた。
 スノウが転落した川の下流。
 駆けつけたガランたちと共に窮地を切り抜けたタカオは、近衛部隊の者たちと夜を徹して将軍の捜索を行っていた。
 追っ手のガリョウ軍は撤退したようだが、いつ敵と遭遇するかも判らない中の捜索だ。それでも、近衛部隊の面々は、一人残らず危険を冒しての捜索を望んだ。
 それが単純な軍規に基づいた行為ではなく、将軍の身を心から案じてのことなのは、すべての近衛部隊員に共通の気持ちである。
「くそっ、お前がついていながら!」
 若いニッショウ兵のやり場のない怒りはタカオに向けられた。彼もまたタカオと同じく、一兵卒から将軍に取り立てられた近衛だった。
 スノウ自身が叩き上げのせいか、自分の部下に関しては立場に関係なくその人間をよく見、評価することを大切にしていた。他人の評価で部下を決める事はまず無く、常に自分の目で確認し、自ら直接出向いて話をしてから近衛に取り立てていた。ゆえに、近衛たちの将軍に対する敬意は強く、その武勇もまた彼らにとって羨望の的だった。おそらく、今現在一対一の立ち合いでスノウに勝てる者は、ニッショウ国全土でもそうはいないだろう。
「……すまん」
 タカオには、ただ黙して唇を噛みしめ、うなだれることしかできなかった。
 なによりも自分の不甲斐なさを感じ、それを悔やんでいるのはタカオ自身なのだ。
タカオの友人でもあるその若い近衛、ショウヘイもそれは痛いほど感じている。それ以上の罵りなど出てきようも無い。
「どうやら、その様子ではそちらも駄目だったようだな」
 黙り込んでしまったタカオたちに声を掛けてきたのは、部下を二人連れてさらに下流の捜索へ行っていたガランだ。昨晩の撤退戦からの強行軍である。その顔には色濃く疲労が浮き出ていた。
「はい……。ガリョウ兵の死体はいくつか見かけましたが、将軍本人も、持ち物も発見できませんでした」
「そうか……」
 眉間に皺を寄せて頷いたガランは、しばらく眼を閉じて考え込んでから、苦しげに言った。
「……引き上げるぞ」
「なっ……!」
 タカオを始め、その場の者たちが絶句する。
「貴様らの気持ちはよくわかる」
 部下たちが口を開くよりも先に、ガランは激痛に耐えるように歯を食いしばって続ける。
「将軍を案じる想いは俺とて同じ。だが、将軍が居られない以上、俺はお前達の命にも責任があるのだ。ここはガリョウに近すぎる」
 川はガリョウ領へと流れ込んでおり、このまま下流へと捜索を続けるなら、ガリョウ国へと入らなければならない。
 目の前の危機は去ったとは言え、現状把握が不十分な現在、ガリョウ側へ足を踏み入れるのはあまりに危険だ。
「それに、将軍が見つからないということは、将軍が自分の足で移動したことも考えられる。
状況の立て直しや情報の整理のためにも、ここはまず帰還を優先すべきだろう」
「は……」
 ガランにしても苦渋の選択なのだ。タカオたちにもそれはわかっている。
「他の連中が戻り次第、引き上げる。いいな?」
「はっ」
 ガランの命令に敬礼し、タカオはもう一度流れに目を向けた。
 流れはいまだ土砂で濁り、うねりながら激しく流れている。
「将軍……」
 その小さな呟きは、流れの轟音に紛れ、掻き消されていった。

 
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