スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「夢酔独言」39

この段落長いよ…。

       裏店神主吉田兵庫のこと

73 この年の十月のことだが、本所猿江・摩利支天の神主に吉田兵庫という者がいて、友人が大勢その弟子になり神道を始めた。自分にも弟子になれというので、出掛けていって仲良くなったのだが、兵庫が「勝様は世間に顔が広いから、私の社に亥の日講(講の一種?)を作って下さいませんか」と頼むので一ヶ月三文五合で人を集めたが、剣術使いを始め町人百姓まで入れて、二三ヶ月で百五・六十人ばかり集まったので、名前を兵庫にやったら喜んで受け取った。
 それから一年半で五・六百人なった。すべて自分の御陰だから「今年の十月亥の日に、神前で十二座并跡で踊りを催して、神いさめをしたい」と頼まれ、まず講の中で世話人を三十八人こしらえた。あちこちへ当日参拝に来てくれと知らせ、当日は皆の見聞のためだから世話人は全員御紋付きを着てくれと言うのでそうしたら、兵庫は装束を着て出てきた。
  だんだん参拝も多くなり、このような賑やかなのは初めてだというので、前町へは色々と商人が出ていた。それから講中の人間がだんだんと集まってきたので、酒肴を出して振る舞っていると、兵庫が避けに酔ってきて西久保に百万石も持ったような面で、自分の友達である宮川鉄次朗に太平楽を抜かしてこき使ったので、自分が怒って怒鳴ったら、礼儀を知らない挨拶をしたので、その場の友人を皆連れて中途で帰った。
 そうしたら他の者が色々と気を使って謝ってきたが、「この講中は自分が骨を折って出来たのだというのに、それを有り難いと思っていないと見える。太平楽を抜かすのはものを知らないということだから、自分は講中を抜けるのでそう伝えてくれ」と言ってやると、大頭伊兵衛・橋本庄兵衛・最上幾五郎という友人が「もっともだが、折角出来たというのに、お前が抜けると皆抜けてしまうので、兵庫も後悔して謝ってくるだろうから、許してやれ」と口々に言うので、「それなら今後は御旗本様へ対し、無礼を働かないという書き付けを出せ」と返すと「どうようにもさせるから」と言うので、宮川并深津金次郎という者と一緒に兵庫のところへ行った。
 そうすると大頭伊兵衛が道まで迎えに来て言うには「お前がきたら、兵庫は狩衣を着て門まで迎えに出る。それから座敷に上がって昨日の不調法を詫びさせるから、挨拶をしてきてやれ」とのことなので「わかった」と言うと、「それからは講中全員座敷に呼んで馳走するから、今回の件は話に出してくれるな」と言うので、「それは残らず承知したが、外の者にはよくよく口止めをしなさい。もしも昨日の話をした奴がいると世話人が嘘つきになってしまうので、片端から斬ってしまうつもりできたと、しっかりと言い聞かせて置くといい」と情けを込めて帰した。
 間もなく兵庫宅へ入ると、兵庫が迎えに出てきて、世話人も残らず玄関まで出てきたので、正面の座敷へ通り、刀掛けに自分が刀を掛けると、皆々座敷についた。
 兵庫がやってきて「昨日は酒興の上、無礼を働き申し訳ない。今後は慎みます」とのことで平伏するので「そこもとは裏だな神主であるから、何事も知らないようだ。御旗本への無礼は言語道断であるから咎めたのだ。講中がようやく大きくなろうという時に、早くも心に奢りを持つから今回のような無礼をするのだ。慎み続けるように」と説教した。それから一同が自分の機嫌をとってもてなしたが、自分は酒が嫌いなので人々が酔って騒ぐのを眺めていると、兵庫の甥で大竹源太郎という人が、自分が兵庫へ裏だな神主と言ったことに腹を立て、昨日の始末を宮川から聞き出し、「小吉はいらない世話を焼く。宮川のことで叔父に大勢の前で恥をかかせた。ここからはおれが相手だ。さあ小吉、出ろ」と鉢巻きをして御紋付を片肌脱ぎ、座敷にやってきた。自分が知らぬ顔をしていたら、正面までやってきて騒ぎ立てるので、「大竹は気が違ったようだ。雑人の喧嘩のように鉢巻きとはなんだ。武士は武士らしくするがいい。自分は侍だから、中間小者のような真似は嫌いだ」と言ってやると、「ふといやつだ」と吸い物の膳を打ち付けたので、自分が刀を取って立ち上がり、「約束を違えて戯言を抜かすのは兵庫が行き届かないからだ。甥が手向かうからには兵庫とも相談済みだろう。相手をしてやる」と言うと、「糞を喰らえ」と抜かしたので、大竹よりも先に斬りつけてやろうと思い、押っ付けたら周りの皆が逃げ出した。
 それから兵庫と大竹が勝手の方へ逃げたので後を追うと、折り悪く納戸へ入ったところを大勢で杉戸を押さえられ、閉じ込められてしまった。大竹はそのまま丸腰で伊予橋の自宅屋敷まで逃げてしまった。それから大勢が杉戸の前まできて取りなしたので許してやったが、「大竹と和睦してくれ」と言うので、大竹の無礼のことを咎めると色々また取りなしが入り、さらには大竹の母親が泣いて詫びたので、伊予橋から源太郎を呼び出した。酒に酔った上でやったことで恐れ入った様子なので「殊更相支配ゆえに何卒御支配向かえへははなしをしてくれるな(原文ママ)」ということで和睦した。
 それからまた酒が出て、大竹が「一杯飲め」というので、「酒は一切飲まん」と言うと、「それはまだ打ち解けていないからだ」と抜かすので、ようやく杯手にしたら「吸い物椀で呑め」と皆が言う。癇癪に障ったので椀で一杯飲んだら、大勢やってきて「もう一杯」とぬかす。それから続けて十三杯。他の奴は酔って色々不作法をしたが、自分はその席では少しも間違いを起こさなかった。
 兵庫が駕籠を出したのでそれに乗り、林丁の橋本庄兵衛宅までいったが、そこからはなにも覚えていない。家へ帰ってからも三日ほど喉が腫れて飯が食えなかった。翌日皆が尋ねて来て、兵庫の家の様子を色々と話した。その時、橋本と深津は後に残り「これからは親類同様にしてくれ」と言って、両人が起請文を一通ずつ寄越した。それから尚のこと本所中が従うようになった。
 兵庫に関しては、胸が悪かったので講中も断ってやった。その時自分が加入させた者は残らず断ったので、だんだん人が減っていき潰れたそうだ。

 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

shibataya

Author:shibataya
人生行き当たってバッタリ。

Twitter
月別アーカイブ
最新記事
最新コメント
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

オンラインカウンター
FC2掲示板
初音ミク 名曲メドレー


presented by 初音ミク オリジナル

フリーエリア
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。